-
-
不幸自慢
羽田野イロハ、高2の2/14。
お家が裕福な友人 アオイが贈ってくれたお菓子を、しげしげと見つめる
「メレンゲのおやつを作ったよ。でもちょっと失敗しちゃったんだあ」とアオイは言う。
アオイは、映画館で映画を観ることが大好きで
中高とそれぞれ一本ずつMy楽器を買い与えられ
クリスマスには「今日はクリスマスだから」とコンビニでケーキを買う子だった。
何でそんなにお金があるのだろうと不思議だったし
メレンゲのおやつとやらを知らなかった私は、金持ちは色んなことを知っているのだと突きつけられて落ち込んだ。
*
羽田野イロハ、風俗嬢。
数日前、メレンゲのおやつが売られていた。
袋いっぱいに詰められたそいつは500円弱。
今はこれを知っている。
今ならこれを買える。
今なら映画館に行くこともできるし、コンビニでケーキも、なんだったら楽器もローンじゃなくたって新品で買える。
リガチャーは好きな塗装をすれば良い。
リードがハズレなら、もう一箱買えば良い。
でも、全て
あのときの気持ちを満たしてくれるような物ではない。
一度手に取ったメレンゲのおやつの袋を、そっと什器に戻して
ブログのネタにしてやろうなんていう
自分流の消化の仕方を考えながら、帰路につく。
-